叶堂沢流域を愛する地主さんとの出会い


手嶋 亨


2000/6/17

 朝叶道沢沿いの道の入口に、「この登山道を使ったら5000円徴収」という看板があり、ヒモが張ってあった。少々気になりながら通り抜けたが、帰りがけのこれについての顛末を次に書く。

  さてここで朝方の看板にまつわる話になるのである。

 この登山道には一カ所廃村があるが、そこを通り抜け少し行ったところで鈴木さんと高橋さんが休んでいる。もう3時間も我々を待っていたそうである。すぐそこの小屋にいるのだそうだ、この沢の持ち主とおぼしき人が。覚悟を決めて通り抜けることにした。向こうがこう出たら、こちらはこう反論しようとか対策を決めつつ。

 静かに通り抜けようとしたが、小屋の外で子供と遊んでいた彼が近づいて来た。意外と若いがっしりしたおじさんだ。「下にあった看板、見たかね。」「はい、見ました。」お前達6人でしめて3万円よこせ、と出てくるかと思ったが、意外と彼はそうは来なかった。

 長くなるので要約すると、この流域は叶道沢を含め、我々の登りつめた林道のあたりまで、ずっと自分の土地だとのこと。イワナがいなかったこの沢にイワナを放流したのも我々で、この自然を守り続けて来たということだ。この地にかけた金は計り知れず、この道だって4000万円をかけて修復したらしい。

 したがって、ここでの釣りや山菜採りは一切許さないらしい。今ではそういう人はいなくなったそうだ。沢登りに来る人はたまにおり、その人からはお金を取ることはしない、そのかわり落ちている缶を1人5個以上拾って来てもらっているとのことだった。沢屋に対する感情は全く悪いものではなかった。一方平気で物を捨てる釣り屋に対しては悪い感情を抱いているようだった。

 30分ほどこの人と話をし、いい雰囲気のもと別れホッとした我々だった。考えてみれば、自然を守るのは自治体にまかせていては全然ダメで、このような形が一番いいのかもしれないね。本当にそこの地を自然を愛している人が心を注ぎ、お金をかけて実行するのが一番間違いがないのだ。そんなことを話しながら下山する我々であった。

 そんなことで、この沢では釣りは「絶対に」してはならない。山菜採りもしかりだ。これは我々沢屋と地主さんとの了解事項なのだ。もし誰かがこの禁をおかせば、我々沢屋全体がこの素晴らしい叶道沢の自然を楽しむことができなくなる。そのようなことは避けなければならない。

 本文を読んだ方は(友好会の方も含め)是非心がけてほしい。そしてゴミは拾って帰りましょう。この地を愛する彼の気持ちを大切にして。

注:栗子山塊にあるこの沢はナメが綺麗なことから当会が月報、年報などで記録として紹介した形になっている。しかしながらこの文にあるように私有地であり、入渓される場合はそれを肝に銘じてお願いします。


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