TOP2005年記録

長いアプローチ、急峻な沢、藪、泳ぎと盛り沢山

北海道・日高/サッシビチャリ川1839峰南面直登沢
〜キムクシュベツ沢 (沢登り)

栗原、小暮

【日時】2005年8月13日(土)〜8月18日(水)
【メンバー】栗原(L)、小暮

8/13 ペテガリ山荘へのアプローチ
 千歳空港で小暮さんと合流し、列車に乗る。これから念願の山旅が始まる。本州ではのきなみ天気予報が悪天を告げていたが、幸いな事に北海道はこれから数日間は晴れそうだ。浦河からタクシーで神威山荘に入るが、天気がいいので今日中にペテガリ山荘まで行くことにした。荷物はかなり軽量化をしたが、それでも予備日を含め8日間の荷物となると重い。先行き不安に駆られながらも約3時間でペテガリ山荘に到着した。ペテガリ山荘には団体さんがおり、我々は小屋の2Fの隅で入山祝いをした。(記:栗原)

8/14 サッシビチャリ川
 今日は1839峰南面直登沢出合付近で泊まる予定なので、のんびりと釣りをしながら遡行する。途中の瀞では小暮さんが中を行こうとトライするも意外と強い流れに突破をあきらめ、左から巻く。西沢出合を過ぎた辺りで魚影が見えたので小暮さんが竿を出した。するとすぐに1匹、また1匹。結局小一時間の間に小暮さんが6匹釣り上げ、軽量化を図った貧しい食卓に花を添えた。
 1839峰南面直登沢出合を過ぎた辺りの河原でツエルトを張り、いつものたき火となるが、ポツポツと降っていた雨がいつしか本降りとなり、慌ててツエルトに避難する。ところが、水位が上がり、テン場さえ危うくなってきた。仕方がないので、食事も中途半端に、雨が小降りになるのを見計らって少し上にある高台に移動する。再びの整地とツエルトの設営が大変だった。(記:栗原)

8/15 1839峰南面直登沢〜1839峰〜ヤオロマップ岳
 今日は1839峰まで抜けるため、気合を入れて朝暗い内に起き、5時10分頃出発する。昨日と違って、私はかなり緊張していた。時折晴れ間が見えるのがちょっとは救いである。20分ほど歩いて二俣に到着した。ここから始まるぞ、と言う雰囲気である。
 10mナメ滝は小暮さんがザイルを引いてリード。2段14m滝も、小暮さんがハーケンを打ちこんでA0で突破し、荷揚げしてから私も空身で登るが、ハーケンが回収できず小暮さんに降りて回収してもらう。・・ちょっと情けなかった。しばらく行くと、いかにも、の雰囲気からやはり雪渓が現れた。右から上がるが、大規模な雪渓で降り口が気になるところである。幸い、左のバンドを伝って沢に降りることができた。続く雪渓は中をくぐり左に抜けるが、我々の行くのは右俣だ。右には大きな滝があり、登れるかどうかトラバースして見に行く。だが厳しそうなので左の沢から尾根をのっ越して右俣に入ることにした。ところがこの尾根に乗るのが殊の外悪い。ルートに悩むが、結局小暮さんがザイルを引いて垂直に近い斜面から尾根に上がった。尾根に上がった。そこからしばらくは藪漕ぎをし、沢が落ち着いたところで懸垂で沢に降りる。どうやらこれで核心部は越したようだ。
 上部はずっとスラブになっており、難しくはないのだが滑ったらアウトで緊張が解けない。空模様も怪しくなり、時折ポツリとくる。スラブを抜けると、最後はやはり藪漕ぎで、5級のハイマツに久々の日高体操になる。幸いひどい藪は20分ほどで終わり、稜線に飛び出した。小雨が降り出していたが、1839峰を往復する。久々の1839峰は、ガスで展望もなく、以前あった1839峰の標識も消えていた。「次は沢から」の念願を果たした感慨にふける間もなく1839峰を後にする。
 ヤオロマップまでは踏み跡がしっかりとあった。ヤオロマップ山頂の近くにツエルトを張るが、水場を探すのに手間取り、もっと事前に調べておくんだったと反省。でも第一関門を抜けた事で、少し気が楽になった。(記:栗原)

8/16 藪縦走、ヤオロマップ岳〜ルベツネ山〜Cカール
 今日はCカールまで藪漕ぎ縦走だ。事前の「晴れ」の予報はどこにいったか、またもやガスっており寒いくらいだ。藪は濃かったり踏み跡がしっかりあったりするが、藪が濃いとどうしても小暮さんに置いて行かれてしまう。それでもなんとか順調にルベツネを越える。ルベツネからは下りなのだが、藪がひどく、絶対登りたくないような道だった。コルからは下のカールが見渡せ、なかなか幻想的な雰囲気であった。そのCカールへと下る。Cカールでは薪を集めたき火を起こすが、吹き降ろしの風が寒かった。明日の天気と気温が気になるところだ。(記:栗原)

8/17 キムクシュベツ沢下降
 御花畑のCカールから、水場へと続く踏み跡を降りていく。沢は急な傾斜で高度を落としている。クライムダウンしていくと、30mの降りられない滝が現れた。ここは左岸の残置スリングを使って懸垂下降。その先もナメ状の滝が連続していて息つかせぬようである。そして、沢が左から合わさったところで、100mはあろうかという大滝となる。滝は急なスラブであり、スリップしたら止まらないので右岸の藪から巻く。大滝下は、本流が左から合わさり巨大な雪渓となっている。安定しているので雪渓の上に乗って越えた。沢はゴルジュの様相になり、泳ぎを交えて下っていく。雪渓も幾つも出てくる。分厚い雪渓を上から越えると、高さがあって沢床に降りられず左岸斜面の潅木に伝わって10mの懸垂下降となった。ゴルジュ状となった沢を進むと、十字形にナメが合流する三俣に達する。正面のナメはAカール、右から入るナメ滝がBカールへとそれぞれ続いている。
 三俣より少し下ると、両岸が狭まったところに雪渓が掛かり、廊下に白泡を立たせた釜と瀞のある八の函である。雪渓をくぐり、白泡の先までへつって飛び込んで泳ぎ下る。雪解け水がとても冷たい。泳ぎ下ると続いて七の函。こちらも同様に、水流に巻かれないように注意して飛び込んで泳ぎ下る。なかなか楽しいが、体が冷えて仕方ない。六の函は30mの瀞を泳ぎ下る。最初は、平泳ぎをしていたが、体力温存のためラッコ泳ぎに切り替える。尚も続くゴルジュの沢をへつり下っていくと五の函となる。いずれも顕著な長い瀞を持っているのでそれと分かる。ようやく沢の水もぬるくなってきて、泳ぎ易くなってきた。
 五の函から四の函までの距離は非常に長い。ぐねぐねと蛇行するキムクシュベツ沢。地形図を見るとうんざりしてしまう。釜を幾つかへつったり泳いだりしていくと再び雪渓が現れる。これは珍しい。瀞の上に雪渓が覆いかぶさっているではないか。雪渓の上には上がれないので、瀞を泳いで雪渓をくぐった。貴重な体験であった。長いゴルジュの沢をへつりながら進んでいくが、泳ぎ疲れのためか、足元がスリップして転んでしまう。四の函は、沢が大きくカーブした先に50m程の長い瀞を泳ぐところであった。予定では、歴舟川出合付近まで行くつもりであったが、いかんせん距離が長くて行けそうにない。三の函から先はゴルジュで幕場もなさそうなので、四の函の先の河原で幕とした。(記:小暮)

8/18 歴舟川と長い林道
 いよいよ下山の日である。キムクシュベツ沢のゴルジュもあとわずかである。三の函は長い瀞となっている。250m位あったように感じた。この先は、ゴルジュ状の沢の中に釜が連続して現れる。へつりで通過できるところも多い。二の函もへつりで越えることが出来て、やや拍子抜けである。最後の一の函も大したことなく過ぎると、歴舟川本流に出会う。歴舟川に出ると、容易な河原歩きになるのではないかと想像していたが、これは間違いだった。本流もゴルジュに相違なく、泳ぎを交えた下降になる。水量が多く沢幅が広いので渡渉が面倒である。まるで伊豆あたりの荒々しい壁に囲まれた磯を下っているような雰囲気だ。へつったり、泳いだりしながら下降していくと、コンクリートの橋脚だけが沢の中にそそり立つ異様な光景に出くわす。ここが流された橋の跡で、右岸には林道が続いている。
 ようやく歴舟川本流下りも終わり、長い林道歩きに突入する。林道は沢の部分で崩壊している部分もあり藪っぽい。六段沢の滝を過ぎた先の沢が最後の崩壊箇所のようだ。ここまでは、車が入れるようである。しかし携帯電話も通じないのでタクシーは呼べない。携帯のアンテナを眺めながら歩くが、いつまでたっても圏外である。途中で携帯が通じてタクシーに上がってきてもらうことを期待していたが、それは叶わなかった。結局、タクシーを呼ぼうと思っていた牧場のところまで来てしまった。ようやく携帯が通じてタクシーを呼ぶことができた。4時間半、約13kmの林道歩きであった。この馬鹿みたいに長いアプローチこそが日高の原始性を保っているのだろう。長くて大変であったが、非常に印象に残る山行であった。(記:小暮)

【行程】
8/13 神威山荘(14:50)〜c.850(15:00)〜ペテガリ山荘C.1(17:30)
8/14 C.1(6:50)〜ペテガリ橋(7:25)〜ペテガリ西沢出合(10:25)〜1839峰南面直登沢出合(12:45)
   〜C.2(13:05)
8/15 C.2(5:10)〜二俣(5:30)〜c.870二俣(8:10)〜稜線(14:00)〜1839峰(14:35)
   〜ザックデポ地(15:05)〜ヤオロマップ岳C.3(17:10)
8/16 C.3(6:20)〜1599峰(10:00)〜ルベツネ山(13:15)〜p.1720(14:00)〜c.1535コル(14:25)
   〜CカールC4(14:45)
8/17 C.4(6:00)〜100m大滝下(7:40)〜三俣(8:45)〜七の函(9:55)〜六の函下(11:00)
   〜四の函下C.5(15:00)
8/18 C.5(5:10)〜歴舟川出合(7:05)〜上滝沢出合(8:05)〜橋脚(8:55)〜清水橋(11:05)
   〜東尾根登山口との林道合流(13:10)〜牧場(13:25)
【地形図】ヤオロマップ岳、ポンヤオロマップ岳、ピリガイ山、神威岳、拓進
【グレード】サッシビチャリ川1839峰南面直登沢:4級、キムクシュベツ沢:4級